立体的な物体も難なく印刷できてしまう『3Dプリンター』。2010年ごろに一般商品化が実現し、多くの家庭でも購入できるようになりました。
当初は高額な商品が多かったものの、普及が進むにつれ、手に入れやすい低価格エントリーモデルもその数をどんどん増やしていき、今では難なく購入できます。
今回はそんな3Dプリンターの選び方について、初心者向けに丁寧に解説していきます。おすすめの商品ランキングも記事後半でご紹介していきますので、購入を検討している方、3Dプリンターに興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
3Dプリンターのメリット
切削ではむずかしい造形が簡単に作れる
3Dプリンターを使えば複雑な造形も作れます。層を積み重ねる方法で印刷するからです。例えば切削では内部に複雑な構造を作れません。やるならばパーツごとに作って組み合わせるなどです。
3Dプリンターは積層なので内部と外部を一度に作っているともいえます。切削では作りにくい独創的なデザインも可能です。複雑な造形も3Dプリンターは得意としています。
デザインの微調整がしやすく、試作品や1点ものにも丁度いい
デザインの細かな調整ができるので試作品のテストに適しています。データを読み込んで印刷という流れだからです。実際の形にしてみないとわからないこともありますよね。
試作のためサイズ調整など発生する確率も高いです。そこで威力を発揮するのが3Dプリンターの手軽さ。ある箇所をほんの少し大きくするのもデータを修正するだけです。サイズ違いもデータをコピーしてから編集すればスムーズです。これが金型や切削などでは同じようにいきません。試作品や1点ものを形に起こすには3Dプリンターが便利です。
少ない材料で低コストになることもある
材料が少なくてすみ、低コストになることもあります。それは材料を削らないからです。3Dプリンターのような積層だと材料を使うのは造形する部分だけです。他の方法だと削るなどの工程があることもあります。
差が出るのは複雑な空洞が多いデザインです。デザインによっては少ない材料になりコストを抑えられます。
3Dプリンターのデメリット
3Dプリンターは複雑な作業をするのでそこがデメリットにつながります。強度についてもその出力方法によるメリットの裏返しです。
うまく使うには知識や経験が必須
3Dプリンターを使いこなすには知識や経験が必須。工程が複雑で使う材質や周囲の環境などが造形精度を左右します。マニュアル読んで操作したつもりでも思ったようにいかないことも。
キャリブレーションの加減、室温、エアコンの風など要因は沢山あります。英語やネットで調べるスキルまで駆使することもあるのが3Dプリンターです。3Dプリンターをうまく使うには知識や経験が欠かせません。
強度を上げるのがむずかしい
3Dプリンターの造形物は強度が上げにくい傾向にあります。層を積み上げて形を作るからです。薄い層を固めながら重ねて自由度高い形にします。そのため一つの塊から造形するより強度が上げにくい側面もあります。
とはいっても3Dプリンターの造形方式の中で熱溶解積層方式は強度があります。塊から造形するのと比較して強度が上げにくいということです。強度が要求される使い方をしなければ問題ありません。3Dプリンターは出力方法を考えると強度を上げるのがむずかしいです。
おすすめの3Dプリンターの選び方
価格で選ぶ
3Dプリンターの価格帯は広いです。卓上に置けるような家庭用のプリンターから工業用まであります。工業用のハイクラスの価格は1,000万円を超えるものも。
一方、家庭用で小型なものは3万円台程度から取り揃っています。
3Dプリンターに慣れていて2台目として低価格モデルはありですが、初心者は価格を優先しすぎると挫折することもあります。サポートや使いやすさも含めて価格を判断した方がいいです。価格帯が広いので予算で絞るところから始めるとスムーズに選べるでしょう。
作りたい作品の大きさで選ぶ
3Dプリンターはモデルごとに『ビルドサイズ』が決まっており、どれくらいの大きさで印刷したいか考える必要があります。小さくする方向ならある程度対応できますが、ビルドサイズを超える印刷は不可能です。
150mm四方くらいあれば作れる幅が広くなります。
ほかにもパーツごとに印刷してあとで合体という流れで、一度に印刷しないで分割する方法もありです。これならばビルドサイズ以上のものが作れます。
こんな工夫も3Dプリンターの醍醐味かもしれません。どれくらいのサイズを印刷するか考えてモデルを選んでください。
造形方式で選ぶ
複数の造形方式があり手軽さやコストが違います。個人が使用するような3Dプリンターだと次の2つの方式が主です。
熱溶解積層方式
『熱溶解積層方式』はFDMやFFFということもあります。取り扱いが簡単で強度もプラスチック製品部品と同じくらいです。そのかわり積層によるデコボコが出やすいなど欠点もあります。
光造形方式
『光造形方式』は滑らかな造形が得意です。使用するレジンの取り扱いに気をつける必要があります。できあがったあとの洗浄も手間です。基本的に熱溶解積層方式より値段の高い機種が多いです。しかし安価なものも登場しており敷居は下がってきています。
造形精度で選ぶ
滑らかなものを作りたいなら『造形精度』をチェックしましょう。造形精度が低いとカクカク、デコボコした表面になります。『積層ピッチ』という数値がこの造形精度に関わるものです。
3Dプリンターは一層ずつ積み上げて造形していく仕組みですが、ひとつひとつの層をどれくらいの薄さにできるかが積層ピッチです。カメラの画素数にも似ているかもしれません。
造形にそこまでこだわらないなら、一般的な0.1mm前後を目安にしてもよいです。高い造形精度があれば滑らかなものが作れます。
オートキャリブレーション機能の有無で選ぶ
細かな調整をプリンター側が自動で行う『オートキャリブレーション機能』があると調整が楽です。3Dプリンターは上下左右にノズルを動かして印刷します。その高さ方向、Z軸方向がしっかり調整できているかが特に大切です。
オートキャリブレーション機能のないモデルだと手動で調整します。紙の挟まり具合でネジを回して、といった具合で、腕や経験が問われる部分ともいえます。
面倒な調整を避けたいならオートキャリブレーション機能が便利です。
モニターやWi-Fi対応など付属機能の有無で選ぶ
『モニター』や『Wi-Fi対応』などの機能があるとやはり便利です。本体に『モニター』があると直感的に操作ができて使いやすいです。PC側にトラブルが起きてもプリンター側で操作できるということもあります。
『Wi-Fi対応』のモデルも接続が楽です。3DプリンターはPCとデータをやりとりする必要があります。そのやりとりの方法はUSB接続やSDカードなどさまざま。そのなかでWi-Fi対応はケーブルも必要なく勝手がいいです。なかにはスマートフォンをコントローラにできるモデルもあります。モニターの搭載やWi-Fi対応しているプリンターは印刷のハードルを下げます。
使用できるフィラメントや素材で選ぶ
使用できる『フィラメント』や『素材』は購入前にチェックが必要です。それはプリンターごとに使用できるものが決まっているから。
使える素材の種類だけでなく、他社製フィラメントに対応しているかも注目が必要でしょう。
純正フィラメントではランニングコストが高いことがあります。品薄で手に入りにくいこともあるので幅広く対応できるモデルは安心です。買いたいプリンターがなにに対応しているか確認するようにしてください。
マニュアルやサポートの充実具合で選ぶ
『マニュアル』や『サポート』が充実しているかどうかはとても重要です。3Dプリンターは思ったように動作しないこともよくあります。そんなときはマニュアルを読む、サポートに連絡するなど対応が必要ですが、海外製の3Dプリンターが多く、言語の問題が生じがちです。
完成品かどうかで選ぶ
候補のプリンターが『完成品』、『組み立てキット』どちらなのかも要チェック。初心者は完成品を買った方がストレスなくすぐ始められるからです。仕組みを知るなら組み立てキットはいい教材になります。ですが本格的なものだと組み立てがかなり大掛かり。
使い始める前からすでに面倒と感じる可能性が高いです。組み立てに慣れている、組み立て含めて楽しめる方以外は完成品がおすすめ。完成品か組み立てセットかご自身のスキルなど考えて選んでください。