『包丁の切れ味が悪くて、食材がうまく切れない』『いい包丁をできるだけ長く使いたい』。そんな方には『砥石』を使ってお手入れをするのがおすすめ。
包丁の切れ味がよくなると硬い食材が切りやすくなりますし、余計な力を入れずに切れるので料理自体が楽に。毎日料理する方にとって、その恩恵ははかりしれないでしょう。
この記事ではそんな砥石の特徴から選び方・使い方まで徹底解説。おすすめの砥石もご紹介しますので、購入をご検討の方はぜひ参考にしてみてください。
砥石とは
包丁を研ぐのに使用する『砥石』。どんなに高級で上質な包丁であっても、使っていれば品質は徐々に落ちてしまうもの。そうなった場合に砥石を使うことで、切れ味を回復できます。
しかし砥石は石の粒子の大きさによって種類が分かれるので、包丁のタイプによって砥石を使い分けることが必要です。
使い方はシンプルで、砥石の表面の小さな突起物に刃物を当てて擦ることで、刃先を鋭くしていきます。慣れてしまえば誰でも簡単に包丁が研げるようになるでしょう。
砥石と研ぎ器 (シャープナー)の違い
砥石と似た道具に『研ぎ器 (シャープナー)』というものがあります。砥石と同じように、刃物の切れ味を上げるために使われます。ではこの2つには、どのような違いがあるのか説明していきます。
砥石は愛用している包丁に
砥石は研ぎ器・シャープナーと比べ、1度研ぐと切れ味を長く保てるので、包丁自体の寿命を伸ばすことも可能です。愛用している包丁がある方は、砥石を使ってお手入れすると長く使用可能にするとよいでしょう。
研ぎ器・シャープナーはその場しのぎで切れ味を戻すときに役立つ
研ぎ器は砥石と違って、長く切れ味をキープするのには向いていませんが、一時的に切れやすくなります。そのため硬い食べ物や切りにくいお肉などをカットする際に、使用すると簡単に切ることが可能に。
使い方も簡単で、包丁を研ぎ器の溝に差し込み、前後に10回程度動かすだけでOK。安全に使用できるので、初心者でも安心です。中には、より簡単に刃物を研げる棒タイプのものも登場し、使い勝手は抜群といえるでしょう。
おすすめの砥石の選び方
包丁の素材で選ぶ
砥石には硬さの違いがあり、包丁の素材によってどれくらい硬い砥石を選ぶかが変わります。今回はステンレス製・鋼製・セラミック製の3種類の包丁に関してご説明していきます、
ステンレス製
錆びにくい素材でお手入れも簡単な『ステンレス製』の包丁。一般的に広く使われる人気のタイプですが、実はステンレス製包丁は、どんな砥石でも研ぐことができます。砥石の硬さ、表面の粒の大きさなどを気にせず選んでOKです。
もしステンレス製の包丁でも、より本格的な包丁に近づけたい方は、『仕上げ石』というタイプの砥石を使うのがおすすめです。
鋼製
より鋭い切れ味を感じる『鋼製』包丁。プロも使用する本格的な包丁です。鋼包丁はお手入れをしながら育てていく楽しみもあるため、砥石選びは非常に大切です。
鋼包丁に合う砥石は硬めのもの。鋼を使用した刃物は非常に硬く、やわらかい砥石を使うと砥石が包丁に負けてしまい、大きく削れてしまいます。鋼包丁をお使いの方は比較的硬い砥石を選びましょう。
セラミック製
非常に硬い『セラミック製』の包丁は、錆びにくくお手入れが簡単というメリットがある反面、硬すぎて柔軟性がなく、壊れやすいデメリットを抱えています。そのためダイヤモンド砥石でしか研ぐことができません。
またセラミック製包丁が壊れた際の修理は素人には難しく、時間がかかってしまいます。そのため万が一刃先が欠けた場合は、研がずにプロに任せるか製造メーカーに問い合わせるのがベストです。
砥石の粗さ (番手)で選ぶ
砥石には表面の粗さによって種類が異なります。主に荒砥石・中砥石・仕上げ砥石に分かれており、どの砥石を選ぶかによって包丁の切れ味が変わってきますので、それぞれの違いを知っていると、適切な砥石を選べるでしょう。なお砥石の荒さは、粒度を表す『番手』で把握できます
荒砥石
『荒砥石』は3つの中でもっとも粒度が小さく、粒度の番号は#120~600番あたりになります。表面が荒く、削る力が強いので使用するにはコツが必要です。
包丁が欠けてしまった際に、活躍するのがこの『荒砥石』で、刃先をフラットに戻します。またサビを取ることにも優れ、表面をきれいにしたいときにも使用できます。
中砥石
粒度が#800~2000番が『中砥石』になります。一般的に使いやすいとされている中砥石は、削る力が丁度いいのが魅力。包丁の減りも中程度なので、主に切れ味を戻したいときや定期的なメンテナンスに使います。
家庭内で使うものであれば中砥石で十分ですので、砥石選びで迷ったら中砥石を選ぶのがベストです。
仕上げ砥石
細かい調整に最適な『仕上げ砥石』。粒度が高く、番号は#3000以上です。削る力が弱いので、大きく削れてしまうことがなく、主に最後の調整やより鋭い切れ味を出したいときに使用します。
プロが使用するのが仕上げ砥石タイプで、ご家庭向きとは言えませんが、使用すると刃の表面に光沢が出てきますし、キメ細かいカットができるようになります。まさに包丁にこだわりがある方におすすめのタイプでしょう。
粗目と細目が裏表になっている砥石もある
『粒度が大きいものと小さいもの両方欲しいけれど、2つ買うのは嫌だな』とお思いの方には、両面に違うタイプが付いている砥石がおすすめ。表裏を変えるだけで、使い分けられるので、1台で2種類の研ぎ方が可能になります。
通常使うのは表側の『中砥石』で、切りにくいものをカットするときは裏面の『仕上げ砥石』を使うといった風に使い分けられます。2種類の砥石を使い分けたい方は、両面タイプの砥石を使ってみてください。
作成工程で選ぶ
電着系
金属の表面にダイヤモンドを電着して作られるのが『電着系』の砥石になります。研磨素材が高く飛び出しているので、切れ味がいいのが特徴。削りすぎには注意ですが、効率よく研磨できます。
また研磨素材が表面上にしか利用されていないので、比較的価格が低いことも特徴のひとつ。長期間使用していると、徐々に削る力が弱くなりますので、注意が必要です。
焼結系
『焼結系』の砥石は、原料を焼いて固める方法で作られます。中層部まで研磨素材が入り込んでいるので、使用の過程ですり減っても長く使用できることが特徴。愛用できる砥石になること間違いなしです。
しかし切れ味が電着のものより劣るのが難点。硬い素材でできている『セラミック製』には向いていません。より長く同じものを使いたい方や買い替えるのが面倒に感じる方はこちらの焼結タイプがおすすめです。
吸水具合で選ぶ
吸水性砥石
包丁を研ぐ際には水が欠かせません。なぜなら水を使うことで包丁のすべりをよくするからです。さらに摩擦熱によるダメージを低減し、包丁が傷むのを防いでくれる効果もあります。
吸水性がある砥石は、水を吸い込む気孔がいくつもあり、そこで水分を蓄えるので、水が浸透するまでに数分程度、水に浸しておく必要があります。
すぐに使用できないというデメリットがありますが、使用中はいちいち水をかける必要がなくスムーズに研磨することが可能です。
不吸水性砥石
不吸水性は言葉の通り、水をまったく吸い込みません。そのため使用前に水に浸す必要がなく、すぐに研磨を開始することが可能です。しかし使用中に水をかけなければいけない手間がかかることがデメリットに。
研ぐ作業の中で水が弾けてしまい、乾燥した状態になってしまうと研磨がうまくできませんし、包丁の刃を傷つけてしまう原因になりますので注意が必要です。使用準備が面倒な方におすすめのタイプになります。
おすすめの砥石メーカー
砥石メーカーで人気なのが『SHAPTON』と『キング砥石』。砥石選びに困ったらこのどちらかのメーカーから選ぶと間違いないでしょう。
SHAPTON (シャプトン)
プロから料理初心者まで多くの人気を集める『SHAPTON』。研磨素材を多く使っているので、早く研磨できるのが特徴です。さらに不吸水性の砥石なので、事前に水に浸けておく必要がなく、すぐに研磨できます。
研磨剤の品質が高いので砥石の減りが少なく、長く使用できる点も魅力のひとつ。また種類が豊富で、包丁の形や素材に合わせて選べるので、あなたの包丁にもぴったりの砥石を見つけやすいでしょう。
キング砥石
松永トイシから販売している『キング砥石』は、リーズナブルな価格が好評です。価格が低いといっても品質の高さは業界トップクラス。天然の砥石にも負けない削りやすさが特徴です。
また種類も豊富で、粒度の大きいものから小さいもの、両面タイプなども取り揃え、あなたの好みに合わせて選べます。価格を抑えたい方、削りやすいものを選びたい方におすすめです。
砥石で包丁を研ぐおすすめの方法
正しい研ぎ方で砥石を使用しないと、満足な効果が得られないことがあります。そこでここからは、正しい包丁の研ぎ方をご紹介していきます。初心者の方はぜひ参考にしてください。
砥石を水に浸す
吸水性の砥石の場合は、まず水に浸して使用しましょう。砥石は水に浸すと、気泡が出てきます。それがなくなるまで浸けておくのがポイント。すべりをよくするためにしっかり水に浸しましょう。
水平な場所に砥石を固定する
水をしっかり含ませたら、水平な場所に砥石を固定しましょう。砥石を不安定な場所に置いて使うのは非常に危険。水平で滑りづらい場所に固定し、砥石台がある場合は必ず使用しましょう。タオルや布巾でも代用可能です。
刃を手前にして研ぎたい場所を押さえる
刃を手前側に向け研ぎたい箇所を、柄を持っていない方の手で上から押さえます。包丁は砥石台に対し斜め45°にし、固定します。砥石に対し垂直にしてしまうとうまく研げないので、角度には注意しましょう。
研ぐときの包丁は背中は割りばし1本分浮かす
研ぐときに包丁が砥石に付いていると、うまく動かせません。ポイントは削らない包丁の背中部分を割り箸一本分浮かせること。スムーズに研いでいくのに重要なことなので、意識しておいてください。
3ヵ所に分けて20往復ずつ包丁を研ぐ
角度をしっかりと固定したら実際に研磨していきます。包丁を3ヵ所に分け、それぞれ20往復程度、研いでいきます。はじめはゆっくりと動かすのがポイント。丁寧に動かし、角度がズレてしまわないようにするのがきれいに研ぐコツです。
『かえり』が出ているのを確認する
包丁を研いでいると、ざらざらした『かえり』が出てきます。これは包丁がよく研げている証拠ですので、研ぎながら『かえり』がしっかり出ているか確認しましょう。またうまく研げないときは、水が足りていない場合があるので、少し水を足しながら研いでいくのがベストです。
両刃包丁は裏面も同じように研ぐ
両刃包丁の場合は裏面も同じように研いでいきます。刃を逆側にして、ポイントを意識しながら研磨します。『かえり』が出ているか、このときも確認しましょう。
水で洗って水気を取って保管する
研磨後は小さい粒子が残っていますので、水でよく洗い流しましょう。『かえり』が残っている場合は軽く1回砥石に擦って、落としておいてください。最後に布巾やタオルで水気を取って完了です。
砥石台のほかのサポートアイテムもおすすめ
砥石台のほかにも、包丁を研ぐときにサポートしてくれるアイテムがあります。今回は『砥石研ぎホルダー』と『面直し砥石』の2つの便利なアイテムについてご紹介します。
砥石研ぎホルダー
研ぐときの角度を固定してくれる『砥石研ぎホルダー』は、研磨に慣れていない初心者の方におすすめです。包丁の角度をキープできるので、研いでいるときに包丁がズレてしまうのを防いでくれます。
包丁によって適切な角度が異なるので、自分の包丁はどの角度が一番研ぎやすいのか確認してから選ぶのがベスト。うまく研磨できるか不安な方におすすめのアイテムです。
面直し砥石
『面直し砥石』は砥石自体を磨くアイテムです、砥石を平面に保っていないと思うように研磨できないので、このアイテムを使ってメンテナンスするのがおすすめ。少し面倒ですが、ヘコんだ砥石使って、包丁がダメージを受けることを防ぐ大切な作業になります。
価格も1000円~2000円程度なので、砥石を長持ちさせるためにも購入することをおすすめします。