PCの性能が上がってくると、気を配るべきなのが冷却です。100%PCの性能を発揮させるためには、効果的に発熱量の多いCPUの冷却を行う必要があります。
『冷却方法』には『空冷』と『水冷』の2種類があり、さらに『水冷』は『本格水冷』と『簡易水冷』に分けられ、より手軽に導入できるのが『簡易水冷』です。
いざ簡易水冷を購入したくても、どれを選べばいいのかよくわからないという方も多いのではないでしょうか。ここでは簡易水冷を選ぶポイントやおすすめメーカーなどをご紹介します。
そもそも簡易水冷とは
『本格水冷』と『簡易水冷』がある水冷ですが、本格的な水冷は高価でお手入れも大変です。一方空冷ほどではありませんが、『簡易水冷』は比較的安価で取付も簡単で、メンテナンスが不要で導入が容易という特徴があります。
簡易水冷は冷却水をケース内で循環させて、PCケース内やCPUを冷却します。高性能のPCを組みたい時や小さなPCケースを使いたいときに、簡易水冷が採用されることが多いです。
CPUクーラーの種類
空冷型
『空冷型』とはファンを回して直接風を当てるタイプのものです。ヒートシンクと呼ばれるパーツが直接CPUの熱を吸収します。その熱をファンの風がPCケース内部に拡散し、冷却するという構造です。低〜中スペックのPCを組む分には、空冷でも十分に対応できます。
メリットは安価で故障が少なく、取り付けが簡単にできること。一方でデメリットはCPUクーラーのスペースがある程度必要なことです。初心者の方、コストをかけられない方には空冷型をおすすめします。
水冷型
『冷水型』とは冷却水が熱を吸収し冷却するタイプです。冷水ヘッド・チューブ・ファンを搭載したラジエーターの3つのパーツに分けられます。
メリットは気温の変化に左右されないため、高水準の冷却効果が期待でき、冷却効率は空冷型より上回りますし、空冷型と比べてファンの騒音も抑えられます。一方でデメリットは、空冷型より効果で、PCケースの制約が多いことです。より高い冷却効果を求める負荷の多い作業をする方におすすめです。
おすすめの簡易水冷の選び方
ラジエーターのサイズで選ぶ
120mm~140mmサイズのラジエーター
主に『キューブ型』のPCケースで使用される、ファンの数が一個の製品です。このサイズは水冷タイプでありながらも安価なのが特徴で、6,000円台から製品があります。ただし冷却性能は空冷に劣る場合もあるので注意が必要です。
小型のPCケースだったり、内部が狭くCPUクーラーが他の部品に干渉してしまったりする場合に重宝します。サイズが大きいほど冷却効果が上がるので、120mmよりも140mmの方が高性能です。
240mm~280mmサイズのラジエーター
『ミニタワー型』や『ミドルタワー型』のPCケースに使用される、ファンの数が二個の製品です。中にはキューブ型PCケースに搭載できるものもあります。
280mm以上ではミドルタワー型のPCケースが必要になることがほとんどです。ただし280mm対応でも、マウントベイの一部またはすべてが犠牲になる場合も。光学ドライブも必要と考えていて、280mm以上のラジエーターを使いたい場合にはご注意ください。
冷却効果を期待する場合は240mm以上の製品を選びましょう。
360mm~420mmサイズのラジエーター
一部の『ミドルタワー型』のPCケースと『フルタワー型』のPCケースに対応する、ファンの数が3個以上の製品です。空冷の場合は多くてもファンは2個が限度なので、冷却性能の高さが期待できます。
簡易水冷はCPU冷却に特化し、周辺のチップセットやメモリーは冷やしません。空冷のファンを併用する場合も多く、トップやサイドに取付けるのが一般的です。内部空間に余裕があれば、フロントやリアへの取付も可能で、より効率的なエアフローが期待できます。
ファンのサイズで選ぶ
120mmサイズのファン
『120mmファン』は1基、2基、3基のタイプが揃うポピュラーな大きさです。『キューブ型』や『ミニタワー型』など、省スペースで使いたい場合にメリットがあります。
120mmと140mmとを単純に比べた場合、140mmの方が径が大きいので冷却効率は高いです。しかしたとえば120mmファンが3つと140mmファンが2つとを比べると、前者の方が冷却効率が上がります。もちろんファンが3つだとスペースは必要です。
140mmサイズのファン
『140mmファン』2つと『120mmファン』3つを比べると、後者の方が静音性や冷却効率は高いものの、その差はそこまで大きなものではありません。ファンの数が多くなると音源が増えるのでうるさくなりそうなものですが、回転数が少なくて済むので音が抑えられます。
スペースに余裕がそれほどない場合、140mmのファン2つでスペースを効率的に使うのがおすすめです。
性能で選ぶ
歴史の長いメーカーや評価の高いメーカーを選べば、特に性能を重視する方も安心できるでしょう。『Corsair』、『Cooler Master』をはじめ、『NZXT』、『Thermaltake』などのメーカーは実績、評価共に間違いありません。
マザーボード側に水冷クーラー対応の『電源コネクタ』と、それをコントロールする『ファンユーティリティ』が付属しているものを選べば、簡易水冷のファンやポンプを細かく制御することも可能です。
値段で選ぶ
空冷型に比べ、水冷タイプは高額です。簡易水冷の寿命は3〜5年が目安ですので、コスパを重視して選ぶのも1つの方法でしょう。ただし粗悪な製品だとトラブルが多かったり、信頼できる販売店で購入しないと保障が受けられなかったりするのでご注意を。安くても信頼できる製品を選びましょう。
稼働部分がファンだけの空冷に比べ、水冷はファンだけでなくウォーターポンプも稼働します。現在は水漏れやクーラント液の蒸発は滅多に起こらないので安心です。
ファンの特徴で選ぶ
『見た目がかっこいいものがいい』という理由で、空冷ではなく簡易水冷を選ぶ人も増えています。近年、内部が見えるよう、PCケースのサイドパネルが『強化ガラス』や『透明アクリル製』のスケルトン構造の製品が流行中です。空冷のCPUクーラーと比べ、簡易水冷は冷却ヘッドがコンパクトでケース内もスッキリしています。
見た目にこだわりたい方は、冷却ヘッドやファンがLED点灯する簡易水冷を選んでみてはいかがでしょうか。
冷却性能で選ぶ
『冷却性能』はCPUの寿命にも直接関わってくる、CPUクーラーを選ぶ上で最も大事なポイントです。価格や見た目も大切ですが、そもそもの冷却性能がイマイチであれば元も子もありません。
簡易水冷の場合ラジエーターを大きくしたり、空冷型と同じようにファンの数を増やしたり、ファンの大きさを大きいものにしたりすることで、冷却性能の向上が期待できます。
静穏性で選ぶ
冷却性能の次に重要なのが『静音性能』です。基本的に冷却性能と動作音は比例します。1分間にファンが回転する回数を表す『rpm数値』が大きくなるほど、冷却性能は向上しますが、同時に音の大きさも大きくなります。
そのためファンの回転音をもともと抑えたモデルや、ファンの回転数をコントロールして静音性を高めたモデルがおすすめです。音の大きさを表すデシベルが、最大数値で20~30デジベル程度であれば、そこまで気にならないでしょう。
取り付け方法で選ぶ
簡易水冷の取り付け方法は複数あります。しっかり固定したい場合は、CPUクーラーとプレートでマザーボードを挟んで固定する『バックプレート式』を選びましょう。
工具が必要で脱着時に手間と時間はかかりますが安心です。簡単に取り付けたい場合は『プッシュピン式』を選びましょう。
CPUクーラーについているピンを押し込み、固定するだけの簡単操作です。ほかにもネジやクリップレバーで固定するタイプがあります。購入前にマザーボードのスペックにあるCPUソケットタイプをチェックし、CPUクーラーの形状やピンの位置を確認しておきましょう。
PCケースで選ぶ
簡易水冷を購入する場合、高機能なものほど大きなスペースを必要とする場合が多いので、必ず所有しているPCケースのサイズにあったものを選びましょう。PCケースに対して大き過ぎて、サイドパネルやケース内部のパーツに干渉する場合もあります。
将来CPUクーラーの交換やファンの増設、その他アップグレードを考えている方は、最初からフルタワータイプの大きめのPCケースを選んでおけば安心です。
簡易水冷のおすすめメーカー
SCYTHE (サイズ)
『SCYTHE』の簡易水冷は耐久性や静音性に優れ、ファン回転数が低くても十分な冷却性能を発揮することが特徴です。
高い知名度を持ち、ロングセラーモデルの『虎徹』を製造しています。手ごろなモデルから、高性能プロセッサー用のモデルまで、幅広いラインナップの空冷式クーラーも展開中です。
Cooler Master (クーラーマスター)
デザイン重視の方におすすめのメーカーが『Cooler Master』です。
LEDライティング機能を搭載した、空冷式の『MasterAir』シリーズや水冷式の『MasterLiquid Lite』シリーズなどに定評があります。空冷から簡易水冷までの幅広いラインナップが魅力です。
NZXT
『NZXT』は、水冷製品をメインに製造するメーカーで冷却性能はもちろん、静音性にも定評があります。
CPUに装着する『CPUヘッド』の丸型デザインが特徴的で、スタイリッシュなデザインが人気です。性能はもちろん、デザイン性にもこだわりたい方におすすめです。
Corsair (コルセア)
コスパを第一に考えたい方やはじめて水冷クーラーを使う方には 『Corsair』がおすすめです。『簡易水冷式CPUクーラー』という、ポンプとCPUヘッドを一体化させた製品が揃います。モデルによってラジエーターも変えており、PCケースのサイズやCPUのスペックに合わせて選択できるのも魅力です。
簡易水冷に関するよくある質問
簡易水冷の平均寿命は?
簡易水冷の寿命は厳密に定義されていません。簡易水冷に限らず、PCパーツの寿命は個々の環境や組み合わせによって変わります。基本的には3〜5年程度と言われることが多いですが、その数字もあくまでも目安にすぎません。
最近は質が高く寿命も長い簡易水冷も多く販売されています。ただしどんな高温でも冷却できるわけではなく、負荷が多くかかればかかるほど、寿命にも影響することは覚えておきましょう。
簡易水冷と空冷の寿命の違いは?
簡易水冷の寿命が3〜5年なのに比べ、空冷の寿命は長めです。空冷はファンによる冷却なので、ファンが汚れていると回転数が落ち、冷却効果も下がります。冷却効果が下がりPCパーツやケースの中に温かい空気が留まると、故障や誤作動の原因にもなるので、定期的にお手入れをしましょう。メンテナンスをしっかり行えば、簡易水冷よりも長持ちするのは事実です。
メンテナンスフリーはメンテナンスが必要ない?
最近では『メンテナンスフリー』の製品も出てきています。ただし完全に何もしなくていいのかというとそういうわけでもありません。大々的に分解をして細かく行う必要はなくとも、簡単なお手入れ方法が記載されていることが多いので、最低限それは行いましょう。
まったくメンテナンスせず、寿命が来たら取り替えるというのも1つの考え方なので否定はできませんが、長く使いたい意志がならある程度手をかけることが必要です。