DIYや大工仕事・工場などの業務用に欠かせない機器の一つが『エアコンプレッサー』です。エアコンプレッサーはもともと空気を圧縮するための機械で、タイヤの空気入れなどに利用できますが、馬力の強い製品であれば他にもさまざまな使い道があります。
圧縮された空気のパワーを利用して『釘打ち』『ボルトのつけ外し』『ほこり取り』『塗装作業』などにも応用が可能。一般家庭用から業務用までさまざまなモデルが存在します。
目次
エアコンプレッサーとは?
エアコンプレッサーとは空気を圧縮する装置のことを指します。家庭用エアコンプレッサーはホームセンターなどでも購入可能です。
エアコンプレッサーはタンク容量などのエアツールを付け替えることで幅広い用途に対応できます。まずはご自身がどんな用途で使いたいのか明確にしましょう。
エアコンプレッサーの特徴
エアコンプレッサーと聞くとタイヤの空気入れが真っ先に思いつくかもしれません。タイヤの空気入れにも使えますが、サビ取りやエアブラシによる掃除、製品のバリ取り、彫刻といった幅広い用途でエアコンプレッサーは使用されています。
タンク容量が少ない代わりに持ち運びしやすい商品、強力で長持ちするけど大型で価格が高い商品など多種多様なモデルが販売されています。
本体の操作箇所の名称・機能
エアコンプレッサーは空気を貯める圧力タンクがメインですが、ほかにも空気を取り込むための吸引フィルタ、圧力機、制御部や空気の吹き出し口など細かなパーツで構成されています。モデルによって名称が異なったり一部パーツが付いていないケースもあります。
エアツールのパーツは用途によって名称が変わり、釘打ちをする場合は『ネイラー』、ボルトのつけ外しは『インパクトレンチ』、空気入れは『タイヤチャック』、塗装する場合は『スプレーガン』と呼ばれます。
エアコンプレッサーの使い方
まずはエアコンプレッサーに使用予定のエアツールを取りつけます。
電源をオンにしてタンク内の空気圧を指定の数値まで上昇させると自動で圧力エンジンが停止し、この状態でエアツールが使用可能となります。圧力メーターはタンク内圧力を測定する場合と射出する空気圧を調整する場合があるので混同しないように気をつけましょう。
エアコンプレッサーは空気圧縮時にタンク内で結露が発生し、空気を吸引時にゴミが付着します。使用後は水やゴミをタンクから排出しないとサビや故障の原因となるので注意が必要です。
エアコンプレッサーの用途
エアコンプレッサーの用途は幅広く、タイヤや浮き輪の空気入れといった用途から製品の彫刻、サビ取り、釘打ち、清掃といった用途で使用することもできます。用途によって求められる馬力が変わってくるので、自分がどんな用途で使うのか購入前に検討することが大切です。
タイヤの空気入れ
エアコンプレッサーと聞いて真っ先に思い浮かぶ用途が『タイヤの空気入れ』ではないでしょうか。エアコンプレッサーの本来の役割は『空気の圧縮』なので、圧縮した空気を高圧タイヤに注入することは一般的な利用方法です。
最近では自動車やロードバイク向けの家庭用電動エアコンプレッサーも発売されており、空気圧も細かく設定可能です。
タイヤ交換
自動車タイヤを個人で交換するときにもっとも労力のかかる作業は『ナットのつけ外し』です。レンチを使って人力作業も可能ですが、エアコンプレッサーを使ったエア工具を利用すれば作業効率が向上し、身体にかかる負担も少なくて済みます。
自動車タイヤのナットをしっかり装着しないと、タイヤが地面に対して垂直に固定されずハンドル操作が効きにくくなってしまいます。自動車タイヤのナットはしっかり締めないと大事故につながる恐れもあり、自分で作業する場合はエア工具とエアコンプレッサーを導入することおすすめします
エアブラシやカップガンによる塗装
工場現場での塗装作業に使う場合はカップガンやスプレーガン、作業場の清掃用に使う場合はエアブラシといったエア工具とそれに見合ったパワーのあるエアコンプレッサーを選ぶべきでしょう。拭きつけて塗装したい場合は馬力の強いものが求められますし、清掃用のエアブラシであれば比較的低価格で馬力の弱いものでも構いません。
エアブラシやカップガンを利用する予定であれば、作業内容によってはオイルを使っていないエアコンプレッサーを選ぶことが大切です。オイル式のエアコンプレッサーは射出される空気中にオイルが若干混じるため、火気を扱う現場などではおすすめできません。
エアダスター・エアブローでの清掃作業
狭いエリアの清掃用であればエアブラシで十分ですが、広範囲にわたって長時間エアコンプレッサーをつかった清掃を行う場合はエアダスターやエアブローと呼ばれるエア工具の導入が必要です。
おもに工場などの業務用で利用されるエアダスターは、タンク容量が最低30L以上のエアコンプレッサーを選ぶなど、馬力の強さを重視しましょう。パワーの弱いものは広範囲にわたって作用しにくく、充電にも時間がかかります。
エアタッカー・釘打ち機を使う
エアタッカーとは『コの字型』の釘を木材などに打ち込む、釘打ち機としてのエア工具のことです。おもに職人さんが使う道具ですが、DIYに凝っている人であれば購入を検討する余地があります。
エアタッカーを購入する場合はいま主流の高圧用エアコンプレッサーとセットで導入するのが良いでしょう。高圧用エアコンプレッサーは常圧用と比較して発生音が小さく本体重量も軽いので、常圧用としても使用可能です。
サンドブラストを使う
サビ取りや表面に模様を入れるといった用途に使用するのがサンドブラストと呼ばれるエア工具で、エアコンプレッサーに接続して使用します。射出する空気に研磨剤を混ぜることで表面を加工することが可能。
サビ取りや模様入れといった用途の他にも『汚れ落とし』『バリ取り』『彫刻』といった作業に利用可能です。難しい技術の取得が必要ない点が魅力ですが、用途によって使用する研磨剤を選定する必要があります。
エアコンプレッサーの種類
エアコンプレッサーを選ぶ際の重要なポイントに『タンク容量』があります。
圧縮した空気を貯めるタンク容量が大きいほど連続使用時間も長くなるので、間違ってタンク容量が小さいモデルを選んでしまうとエアの充填を頻繁にする必要があり、作業効率の低下につながります。
下記ではタンク容量別のおもな用途についてご紹介します。エアコンプレッサー購入前に、自分はどんな用途で使うのか検討しましょう。
容量別のエアコンプレッサーの種類
~9L
タンク容量9L以下のエアコンプレッサーはかなりの小型モデルに属します。商品によってはタッカーやサンドブラストといった用途に耐えうるハイパワーモデルも販売されていますが、タンク容量が小さいので長時間の利用にはおすすめできません。
一方で自転車タイヤの空気入れや狭い範囲にエアブラシをかけるといった用途であればタンク容量が小さいエアコンプレッサーでも十分です。タンク容量9L以下のモデルを購入するなら、本体重量やサイズなどの取り回しの良さも考慮することが大切です。
10~19L
コンパクトなモデルも多く、ゴムボートの空気入れやエアブラシを使った掃除用としての使い勝手も良いのが、タンク容量10~19Lクラスのエアコンプレッサーです。空気をしっかり貯めておけば、家庭用エアコンプレッサーとしてはまず問題ありません。
モデルによっては自動車タイヤの空気入れにも対応しているのがポイントです。ただし使用用途によってはタンク容量が足らずに作業性が下がる可能性もある点に注意する必要があります。
20~29L
タンク容量20~29Lクラスのエアコンプレッサーは、DIY用途であればまず実用面で困ることはないでしょう。射出パワーが協力なのはもちろん、長時間の連続使用も可能になるので、塗装や彫刻、タイヤ交換、掃除用としても安定して利用可能です。
お値段も手ごろな商品が多くコストパフォーマンスに優れていますが、19L以下のモデルと比べて本体サイズや重量がアップしている点には注意が必要です。家庭用エアコンプレッサーとしては20~29Lモデルを選んでおけば問題ないと思われます。
30L~
30L以上のタンク容量を誇るエアコンプレッサーは業務用として利用されることも多く、高品質なモデルが多いのが特徴です。エアタッカーやサンドブラストを用いた作業はもちろん、塗装用やインパクトレンチの使用など、仕事用としても使い勝手が良いでしょう。
本格的なサイズの製品もある反面、静穏性や持ち運びを重視した小型モデルなどラインナップが充実しています。
オイル別のエアコンプレッサーの種類
エアコンプレッサーにはモデルによって、潤滑油としてオイルを使用している『給油式』とオイルを使っていない『オイルレス式』の2種類が存在します。
給油式
『給油式』は耐久性や連続使用時間、低騒音かつ低振動といったメリットがある反面オイル交換の手間や射出した空気にオイルミストが混ざるといったデメリットもあります。
オイルレス式
『オイルレス式』はその名の通りオイルが使用されていないモデルなので、塗装作業や火気を扱う現場ではおすすめです。
携帯用エアコンプレッサー
エアタンクを装備したエアコンプレッサーはさまざまな用途で使えますが、タイヤやホイールの空気入れのみに使いたいという方は携帯用エアコンプレッサー購入も選択肢に入れましょう。
携帯型エアコンプレッサーはコンパクトで持ち運びしやすく収納にも優れています。携帯用エアコンプレッサーにはあらかじめ充電して使用するモデルと、車のシガーソケットから給電して使用するモデルがあります。
充電式
『充電式』はインパクトドライバーのような形状をしており、浮き輪やボールの空気入れとしてはもちろん、自転車や自家用車、バイクのタイヤへの空気入れにも利用できます。
充電式なので場所を問わず利用できるのが強みで、海でのレジャーやドライブなどのアクティビティ時に携帯して使用したい方におすすめです。ディスプレイ上で空気圧の設定を確認したり、アタッチメント一式をまとめて収納・販売しているモデルもあります。
シガーソケット式
『シガーソケット式』は自動車や電動バイクのタイヤに空気を入れる際に重宝します。充電式と比較して安価ですが、利用するのにシガーソケットが必要であるという点からやや使い勝手が劣ります。
いざという時のために自動車に設置しておくといった使い方であればコストパフォーマンス良しです。こちらも空気圧などの設定をディスプレイ上で確認可能で、収納ケースも付いているので持ち運びやすさの面では充電式に負けていません。
エアコンプレッサーの選び方【スペック・用途】
タンク容量以外にも吐き出す出力の違いやタンク内の最高圧力、騒音性などを購入前に考慮しましょう。火気を扱う現場や塗装作業などではオイルレス式コンプレッサーを選ぶことが大切ですし、連続使用する予定ならタンク容量の大きいモノを購入するのが良いでしょう。
吐き出し空気量・馬力 (出力) で選ぶ
エアコンプレッサーを使って凝った作業がしたい場合は吐き出し空気量に注意してみましょう。吐き出し空気量は出力や馬力に影響を受けており、出力や馬力が上がるほど吐き出し空気量も増えます。
モデルによって『PS』と表したり『kW』表示で表すこともあるので気をつける必要があります。使用用途に必要な吐き出し空気量より少し余裕を持たせたスペックを選ぶことも重要なポイント。
馬力や出力があがるほど消費電力があがります。例えば3馬力、つまり2.2kW以上のモデルは200Vに対応した専用コンセントが必要です。
タンク内最高圧力で選ぶ
エアコンプレッサーを連続して長時間使用する予定の場合には、タンク内最高圧力がタンク容量と同じくらい重要です。タンク内最高圧力が高いほど再始動までの時間が長くなりますが、圧力充填が完了したあとは比較的長時間使用することができます。
家庭用モデルなら0.8MPa前後で十分ですが、業務用向けに最高4.5MPaに対応したモデルもあります。タンク容量とタンク内圧力をチェックしながら自分の利用用途にあったモデルを選びましょう。
音の大きさで選ぶ (騒音性)
仕事として使うならともかく、個人の家庭でエアコンプレッサーを利用するときに要注意なのが騒音性です。圧縮された空気を射出するため音が発生するのは避けられませんが、できるだけ騒音は近所迷惑にならないレベルにおさえたいもの。
静穏性をアピールしているモデルもあるため、購入前にチェックすると良いでしょう。
dB表示と騒音レベル
騒音性に気をつけたい方はエアコンプレッサー購入時に騒音値『dB (デシベル) 』を確認しましょう。
かなり騒音を抑えたエアコンプレッサーが必要な方は40~60dBあたりのモデルを比較するのが良いでしょう。40~60dBで『静かな図書館での一般的な会話』、80dBで『目覚まし時計』、100dBで『地下鉄の電車』、120dBで『飛行機の爆音』レベルの騒音となります。
主なメーカー
エアコンプレッサーを作っている会社は専門メーカーから総合家電メーカーまでさまざまです。メーカーによって得意としている種類も異なるので、会社ごとに製品を比較するのも面白いでしょう。
アネスト岩田
『アネスト岩田』は神奈川県に本社がある大手エアコンプレッサーメーカーです。東証一部に上場しており、幅広いエアコンプレッサーのラインナップを揃えています。1926年に創業されており、信頼と実績のあるメーカーといえます。
明治機械製作所
『明治機械製作所』は大阪に本社のあるエアコンプレッサーおよび塗装設備関連の総合メーカーです。業務用エアコンプレッサーとして市場シェアを獲得しており、医療や農業、自動車といった幅広い分野で明治機械製作所が作ったエアコンプレッサーが活躍しています。
富士コンプレッサー製作所
『富士コンプレッサー製作所』は1946年創業の専門メーカーで、おもにエアコン向けコンプレッサーおよび関連機器を手掛けている会社です。エアコン関係のコンプレッサーでお悩みがあればここに問い合わせると良いでしょう。
マックス
『マックス』はエアコンプレッサーの他にも釘打ち機や結束機、オフィス機器などを作っている大手メーカーです。ホッチキスのほとんどはマックスブランドが占めているなど、ニッチな分野で圧倒的なシェアを獲得しています。
マキタ
『マキタ』は日本の有名な電動工具メーカーです。東証一部にも上場しており、電動工具では国内で半分以上のシェアを占めています。エアコンプレッサーでは大工向け釘打ち機用モデルを展開中です。
HiKOKI (ハイコーキ) (旧 日立工機)
『HiKOKI』はマキタに次ぐ電動工具の大手ブランドです。会社の名前は『工機ホールディングス』で、こちらも大工向けエアコンプレッサーを主に販売中。日立グループに属していましたが、2017年3月にアメリカの投資会社に買収されています。
藤原産業
『藤井産業』は『DIYライフを応援する会社』とアピールしており、家庭用エアコンプレッサーから園芸用品、大工向けの作業道具まで幅広いDIY製品を取り扱っているメーカーです。ホームセンターや各種専門店で藤井産業の製品を購入できます。
高儀
『道具で世界に笑顔を』を理念に様々な工具を扱う商社が『高儀』です。創業は1866年とかなりの老舗で、おもに金物を扱っています。エアコンプレッサーは家庭用向けモデルを販売中。
ミナトワークス
『ミナトワークス』はミナト電機工業の販売しているブランドで、おもに通販で購入できます。
エア充填用からサンドブラスト用まで幅広い家庭用エアコンプレッサーが入手可能です。
エアコンプレッサーを長持ちさせるためにできること
吐き出し空気量に余裕をもたせた機種選定
エアコンプレッサーの能力、とくに吐き出し空気量には余裕をもたせたモデルを選ぶことが重要です。吐き出し空気量よりも空気消費量が足りない場合、エアコンプレッサーは連続稼働し、これが続くと製品寿命を早める原因となります。
使い終わった後のお手入れ
エアーコンプレッサー使用後は必ずタンクを開けて圧力を開放させるようにしましょう。放置したままにすると次回使用時に製品の不具合や事故につながる恐れがあります。タンク内に溜まった水を抜いておくことも重要です。
タンク内に水を貯めたままだとサビの原因となり、タンク容量の低下につながります。使用後は電源を入れたままコックを緩めて1~2分モーターを運転させると確実に水抜きできます。
エアコンプレッサーの他にも、あると便利なアクセサリー
補助タンク
『補助タンク』はエアコンプレッサーのタンク容量を増設することができます。タンク容量が増加すれば連続使用時間も比例して向上するので使い勝手が良くなります。補助タンクは各メーカーが専用品として販売しているため、使用しているエアコンプレッサーとおなじメーカーの補助タンクを選択する必要があります。
フィルター
家庭用エアコンプレッサーでは気にならないかもしれませんが、業務用エアコンプレッサーの場合は微量の水分やゴミの混入が命取りとなるケースもあります。精密機器へのエアダスター作業時などはエアコンプレッサーのホース間に『フィルター』をはさみましょう。
吐き出し口にフィルターを取り付ければ、ゴミや水分を取り除くことができ、エア工具内部に水分が付着してサビることを予防することもできます。
レギュレーター
『レギュレーター』とはホースライン間にはさみこむパーツで、空気圧を調整したりフィルター機能をあわせもったモデルもあります。作業中に空気圧を微調整したい場合にエアコンプレッサー本体まで毎回もどるのは効率的な作業とはいえません。
レギュレーターを使えば手元に近い場所で圧力を微調整し、空気の流れを安定化させることも可能です。作業中に空気圧を細かく変更したいユーザー向けのアクセサリーです。