性能のよさからツール・ド・フランスなど、世界最高峰のサイクルロードレースでプロたちも愛用している『チューブラータイヤ』。しなやかでなめらかな乗り心地のよさで、プロ以外でも多くの人に支持されています。
しかし今ではクリンチャータイヤが主流となり、チューブラータイヤの情報量が少なく、選び方に困っている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、チューブラータイヤの選び方、タイヤの交換方法を丁寧に解説していきます。記事後半ではおすすめの売れ筋チューブラータイヤをランキング形式でご紹介しますので、興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
チューブラータイヤとは
『チューブラータイヤ』とは、タイヤの内部にチューブが縫い付けられたタイプのタイヤです。タイヤとチューブが一体化しているため、取り外せない構造となっています。『リムセメント』と呼ばれる接着剤や専用の両面テープを使い、ホイールに接着します。
チューブラータイヤは『最初に作られたタイヤ』といわれており、最近ではタイヤとチューブが別々の『クリンチャータイヤ』の方が主流ですが、その性能の高さから今なおプロの間で、レースの決戦用タイヤとして多く用いられています。
チューブラータイヤのメリット
チューブラータイヤの大きな魅力はその『軽さ』。1分1秒の早さを競うレースの世界では大切な要素です。シンプルなリム構造により、漕ぎ出しが軽く感じられるはずです。
また真円に近いタイヤの構造から、しなやかな転がりを実現し、高速性能に優れており、コーナリングのグリップ力が高い点も魅力。
リム打ちパンクの心配がない上、仮にパンクした際にもゆっくりと空気が抜けるスローパンクとなるため、しばらくは乗り続けることも可能です。
チューブラータイヤのデメリット
チューブラータイヤのデメリットはパンク修理ができないこと。タイヤとチューブが一体化した構造のため、基本的にはタイヤ自体を交換しなくてはなりません。
リムセメントや両面テープによる接着作業を行わねばならず、クリンチャータイヤに比べ、パンク時の対応に手間と時間がかかります。交換用に予備のタイヤを持ち運ぶと荷物や重量の増加も悩みの種。
専用のホイールが必要になることや、パンクしたタイヤは使い捨てとなることから、コストパフォーマンスも劣ります。また接着により取り付けしていることから、雨に弱いという面もあります。
おすすめのチューブラータイヤの選び方
チューブの素材で選ぶ
チューブラータイヤに使われている主なチューブは『ラテックスチューブ』と『ブチルチューブ』の2種類。それぞれの特性を知り、使用目的に合うものを選びましょう。
ラテックスチューブ
『ラテックスチューブ』は、しなやかな乗り心地と軽量性に優れておりパンクしにくいのが特徴。ただし空気の透過性が高く、空気の減りが早いというのが大きなデメリット。使用前は空気圧の調整が必須となりますし、ブルベのような長距離ライドには向きません。
空気の減りが早いという大きなデメリットがあるものの、走行性能は高く、1分1秒を争うレースには欠かせないチューブです。ラテックスチューブを採用しているメーカーは、『SOYO TYRE』や『Vittoria』、『ミシュラン』が有名です。
ブチルチューブ
『ブチルチューブ』は、クリンチャータイヤやママチャリにも使われている黒いゴム製のチューブ。空気の透過性が低く、空気が抜けにくいのが特徴です。空気圧の調整は週に1度~数週間に1度行えば十分使用できます。
強度にも優れており気軽に使える魅力がありますが、乗り心地や走行性能はラテックスチューブに劣ります。価格も安価でコストパフォーマンスに優れていますので、トレーニングや練習時、通勤通学など日常での使用に適したチューブです。
使用目的で選ぶ
レース用
レースで使用するのなら、軽さやグリップの性能、転がりの抵抗が重要になります。乗り心地やグリップの限界値が上がるといわれている『ラテックスチューブ』を使ったモデルが適しています。ゴム素材の『コンパウンド』は地面をしっかりとらえるので、その分摩耗は早くなるでしょう。
タイヤの繊維である『ケーシング』にコットンやセタ(絹)を取り入れた上位モデルを選ぶと、さらなるしなやかな乗り心地を追求できます。性能を重視するため、耐摩耗性は下がり、価格も高くなる傾向があります。
トレーニング・練習用
トレーニング・練習時に使用する場合、気軽に使える耐摩耗性やコストパフォーマンスに優れたモデルが有用です。重量やグリップ性能はレース用に比べて重視しなくてもよいでしょう。
便利なクリンチャータイヤを用いることも多いですが、安価な『ブチルチューブ』を使用したチューブラータイヤという選択肢もあります。『コンパウンド』は耐摩耗性を重視しており、グリップ力はレース用に比べ劣るものの、その分長く使えるというメリットがあります。『ケーシング』には耐久性に優れたナイロンやポリエステルなどの化学繊維を採用したモデルがよいでしょう。
通勤ロード用
通勤にロードバイクを使用したいのであれば、走行性能よりもパンクのしにくさや耐摩耗性を重視しましょう。通勤では、ラテックスチューブを使用したモデルより、ブチルチューブを使用したモデルが適しているでしょう。
タイヤ幅は乗り心地がよく快適性に優れた太めのものを選ぶと安定したライドを楽しめます。
タイヤの太さで選ぶ
走りの快適性に大きく関係するのがタイヤの太さ。タイヤの太さは『23C』のように表記されます。
『23』はタイヤの『幅』を表し単位はmm。『C』は『リムの規格』を表し、ロードバイクでは基本的に『C』が用いられます。ではチューブラータイヤで主に利用される23C、25C、28Cの3種類を比較してみましょう。
走りの軽い23C
早さと距離を競う自転車競技のロードバイクでは、細いタイヤの方が有利だと考えられていました。そのため従来主流となっていたのが『23Cタイヤ』です。
23Cは空気抵抗が少なく、優れた加速性とハンドリングの軽さがメリット。タイヤ自体の軽さにより車体重量も抑えられ、瞬発力が求められるレースで活躍します。長距離ライドでも疲れを感じにくいでしょう。
しかし太いタイヤに比べると安定性は劣ります。衝撃吸収性が弱く、路面の影響を受けやすいため、少しの段差などでも体に衝撃を感じやすくなります。太いタイヤに比べてパンクしやすい点や、空気が抜けやすい点もデメリットです。
安定感のある25C
23Cと25Cを同じ空気圧にして乗った場合、タイヤの変形が少なく転がり抵抗が少ないのが『25Cタイヤ』。安定性にも優れ、グリップ力や耐パンク性も持ち合わせており、初心者の入門モデルからプロの本格的な使用に関しても用いられています。
23Cに比べると重量があり加速性は劣るものの、スピードに乗った後の転がり抵抗は23Cよりも少ないため、メリットも大きいと考えられています。
乗り心地の28C
スピードよりも快適な乗り心地を求めている人におすすめなのが『28Cタイヤ』。28Cタイヤはロードバイクよりクロスバイクに多く用いられています。安定性に優れ、乗り心地のよさは抜群。パンクもしにくく、路面の影響も受けにくいのがメリットです。
しかし重量や転がり抵抗が増えるため、軽やかでスピーディーな走行性は失われます。スピードより快適性が重視されるロングライドや通勤通学などに向いているでしょう。
おすすめのチューブラータイヤメーカー
PANARACER
日本国内に開発と生産拠点を持ち、ハイクオリティな純国産タイヤを生み出し続けている『PANARACER』。軽量で耐久性に優れ、品質性・デザイン性・機能性すべてにおいてバランスのよい製品が魅力。国内外を問わず多くのライダーに愛される実力派ブランドです。
SOYO TYRE
『SOYO TYRE』といえば職人の手で作り上げられるシームレスタイヤが有名。継ぎ目のないという最大の特徴を持ち、世界で唯一の技術といわれています。国産ラテックスチューブを採用し、レースに勝てる性能をとことん追求したハイクオリティブランドです。
TUFO
チェコに拠点を置き、チューブラータイヤをメインに製造する『TUFO』。軽量性に特化したラインナップも豊富でヒルクライムなどでは有利に立ち回ることができるでしょう。『チューブラークリンチャータイヤ』という、クリンチャーリムに装着可能なチューブラータイヤを独自に取り扱っており、技術力の高いブランドです。
Vittoria
自転車競技の本場ヨーロッパでロードバイクの代名詞といわれるほど有名な『Vittoria』。取り扱うチューブラータイヤはレース用から練習用まで豊富に揃っています。数々のレースで勝利を収めた実力から多くのライダーから厚い信頼を集めるブランドです。
CONTINENTAL
『CONTINENTAL』はドイツに本社工場を置く一流タイヤブランド。チューブラータイヤはレースでの使用を前提として作られており、耐久性とグリップ性能に優れています。レース用のチューブラータイヤはラテックスチューブを使うのが一般的ですが、CONTINENTALではブチルチューブを採用。空気が抜けにくくメンテナンス性にも優れています。
チューブラータイヤの交換方法
クリンチャータイヤと違い、タイヤごと交換する必要のあるチューブラータイヤ。大変そうと思うかもしれませんが、実際の手順はそれほど難しくありません。交換方法を簡単に解説します。
古いチューブラータイヤを外す
ホイールを車体から外し、タイヤの空気を完全に抜きます。バルブと反対側の接着面にタイヤレバーなどを差し込み、ホイールを傷つけないよう注意しながらタイヤを剥がします。
手が入るくらい剥がしたら、手で掴み剥がしましょう。
古いリムセメントを剥がす
タイヤを外した後は、リムの残った古いリムセメントを剥がしていきます。リムセメントが取れにくい場合には『リムセメントクリーナー』などを活用しましょう。リムテープを使っている場合には、ドライヤーでテープを温めると剥がしやすくなります。
新しいタイヤを取り付ける
新品のタイヤは硬いため、事前に伸ばしておく必要があります。新品のタイヤをリムに取り付け、放置することでタイヤを伸ばしリムに馴染ませることができます。1日程度放置しリムに馴染んだら、空気を抜きタイヤを外しましょう。
新しいタイヤにリムセメントを塗る(貼る)
リム表面を脱脂剤でクリーニングしてから行います。
リムセメントの場合は、リム表面にセメントを塗り、指に液体が付かない程度まで乾かします。リムテープの場合は、リム側のバルブ穴を避けて貼りましょう。
リムに新しいタイヤをはめる
リムを立てた状態にし、バルブ穴を上に向けます。タイヤのバルブ部分をリムのバルブ穴に通します。ねじれないように注意しながら、両手を使い下に向かって引っ張りながらリムにはめていきましょう。
センター出しを行う
センター出しを行い、走行時のブレの原因となるゆがみを取り除きます。ホイールを回転させタイヤとホイールのセンターにズレがないか確認しましょう。ズレがあれば手でタイヤを揉むようにしながら中心軸を合わせていきます。
空気圧を合わせ乾燥させる
空気を規制値まで入れます。リムテープを使用している場合には、フィルムを剥がしてから空気圧を調整しましょう。リムセメントの場合もリムテープの場合も、24時間~72時間程度そのまま置いておくとしっかり密着させることができます。